クライバーを偲んで... オッフェンバック 《美しきエレーヌ》

クライバー今日7月13日は故カルロス・クライバーの命日です。あれからちょうど10年が経ちました。

毎年この日には偉大なカペルマイスターを偲んで、カルロスが振ったことのあるオペラやオペレッタのリブレット対訳テンプレートをリリースすることにしています。

今年はオッフェンバックの《美しきエレーヌ》です。Erich & Carlos Kleiber page の情報によりますと、1963-64シーズンにデュッセルドルフのライン・ドイツ・オペラで相当な回数を振っています。《美しきエレーヌ》は訳したいオペラにもリクエストをいただいていました。お待たせしました。

対訳テンプレートはこちら → 美しきエレーヌ

公開したリブレットはもちろんフランス語ですが、クライバーが振ったのはドイツ語版だったかもしれません。

クライバーが死んだらレコード会社や放送局に眠っているテープが一気に蔵出しされるかと期待してました。バイエルン放送協会あたりにはミュンヘンやバイロイトで録ったラジオ放送用のテープが大量に残っているでしょうから。有名なバイロイトの《トリスタン》なんかはオルフェオ・レーベルからすぐにでも正規ステレオ盤で発売されるものと思っていた。

ドキュメントは出た。日本語で読める伝記がひとつ、そしてNHKでも放送されたドキュメンタリー・ヴィデオが2種。どちらのヴィデオにも顔を出すカルロスの姉、ヴェロニカ(父にも弟にもクリソツでワロタ)が「子供が何も話さないのでみんな私に話を聞きに来る」みたいなことを言ってたような。カルロスは子供たちに「絶対首を縦に振るな」と厳命して死んだらしい。

そんなわけで振り返ってみれば、相変わらず海賊盤としてリリースされるCDはたくさんあっても、この10年にメジャーレーベルから正規盤として新たに発売されたCDは、1973年の《ばらの騎士》オッフェンバックの超マイナーなオペレッタぐらいかな(後者はたぶん隣接権切れで許可なしで出せたのだと思う…前者が出せた理由はよくわからない)。

カルロスの蔵出し音源が思う存分聴けるようになるのは、著作隣接権の保護期間が切れる公開から50年後、もしくは未公開音源であれば録音から50年後。バイロイトの《トリスタン》の正規盤は2025年になれば可能性があるかもしれません。TPPが締結されればそんな期待もパーですけどね。

さてそんなサプライズのない10年で一番びっくりしたのが、ドキュメンタリー・ヴィデオのどちらかに収録されていた、あの「テレーズ事件」の実録テープ。これは本当に驚いた。隠し録りなんでしょうか、これは。こんなものが残っていたなんて。

「テレーズ事件」、数あるカルロス伝説の中でも特に有名だからみんな知ってると思うけどいちおう説明しておくと、この事件が起こったのは1982年12月、ウィーン・フィルとベートーヴェンの緩徐楽章を練習中のこと。カルロスはあるパッセージを「テレーズ、テレーズ」と弾いてくれと指示した。君たちのは「マリー、マリー」になっていると。とっぴな言葉で楽員にイメージを喚起させるカルロスの得意技がこのときばかりは効果を発揮しなかった。何度やってもうまく行かずとうとうブチ切れたカルロスは……いつものように逃亡した。その後数年間ウィーンで仕事はしなかった。

(人のプローベにはへーきで潜り込むくせに)自分のプローベには神経質なまでに部外者を入れなかったし、事前に聞かされていなかったラジオ放送用のマイクを見つけると病気になり仕事を放り出す人です。考えても見てほしい。こんなものが残っていることがカルロスに耳に入っていたらということを。もう二度とウィーン・フィルとは仕事をしなかったに違いないし、それどころかウィーンにさえ近づかなかったのではないか。そうなれば当然、二度の「ニュー・イヤー・コンサート」も無かったし、ブラ2の壮絶ライヴも東京の《ばらの騎士》も、ぜーんぶ無かったかもしれないのです。

美しきエレーヌ
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