デュカス ≪アリアーヌと青ひげ≫ 対訳完成(岡野馨 訳)

アリアーヌと青ひげデュカス ≪アリアーヌと青ひげ≫のリブレット歌詞対訳が完成しました。

日本語対訳はこちら→ アリアーヌと青ひげ

先週リリースした≪ペレアスとメリザンド≫と同様、ノーベル賞作家モーリス・メーテルリンクの戯曲≪アリアーヌと青ひげ≫をほぼそのままリブレットに使ったオペラです。≪ペレアス≫で利用した鷲尾浩訳「メーテルリンク全集」にはなぜか≪アリアーヌと青ひげ≫は含まれおらず、「世界童話大系第20巻童話劇篇(二)」の中に岡野馨訳というのが見つかって助かりました。

「オペラ対訳プロジェクト」では、翻訳ボランティアさんの手による対訳制作と並行して、著作権保護期間が終了した戯曲などの訳文からオペラの日本語対訳を制作してきました。これまでの成果は次の5作品です。

ワイルド(ラッハマン)/森鴎外訳→ ≪サロメ≫
ホフマンスタール/楠山正雄訳→ ≪エレクトラ≫
メーテルリンク/鷲尾浩訳→ ≪ペレアスとメリザンド≫
メーテルリンク/岡野馨訳→ ≪アリアーヌと青ひげ≫
Calzabigi/森鴎外訳(戯曲の翻訳に非ず)→ ≪オルフェオとエウリディーチェ≫

≪オルフェオ≫は別として、このような文学作品に基づくオペラを特に「文学オペラ(Literaturoper)」と呼ぶんだそうです。綴りでわかる通り、主としてドイツ・オペラで用いられてきた呼称のようで、ウィキペディアで調べると、日本語版にはその項はなく、ドイツ語版英語版にだけ見つかります。英語版の定義は次の通り。
Literaturoper is opera with music composed for a pre-existing text,
as opposed to an opera with a libretto written specifically for the work.
もとは戯曲だからといって「オテロ」や「ファウスト」は「文学オペラ」には当たらないんですね。「an opera with a libretto written specifically for the work」だから。既存のテキストにそのまま曲をつけると「文学オペラ」ということのようです。ドイツ語版、英語版ウィキペディアには「文学オペラ」として分類される作品が一覧になっています。ベルクのオペラも「文学オペラ」ということになっていますけど、リブレットは作曲者自身の手がかなり入って「a libretto written specifically for the work」になっているんじゃないですかね。またベルクが「文学オペラ」なら、先月対訳が完成した≪マクロプロス事件≫も「文学オペラ」に加えてよいように思います。この辺の線引きは難しそうですね。

しかし、戯曲の著作権切れ訳文を使った「文学オペラ対訳シリーズ」も今回の≪アリアーヌと青ひげ≫でひとまず打ち止めかもしれません。「文学オペラ」が盛んになる20世紀のオペラとなると、作曲家の著作権、戯曲作家の著作権、翻訳者の著作権、いずれかの保護期間が残っている場合が多く当プロジェクトで扱うのが難しくなります。それにマイナーな戯曲だと和訳そのものがなかったりします。

それにしても「文学オペラ対訳シリーズ」を制作していてひしひしと感じるのは、明治~大正~昭和初期の演劇界のエネルギーです。ホフマンスタールやメーテルリンクを同時代的にガンガン輸入して舞台にかけていたのですよね。≪サロメ≫や≪エレクトラ≫の翻訳が複数種手に入る当時の状況というのはすごいと思います。また、その翻訳がいいのですよ。少なくとも、いま国内盤オペラCDについてくる対訳の和文と比べて、翻訳が正確で表現力も豊かなように感じました。

一方、オペラ界のほうは、シュトラウスのオペラなんて、初演は全部戦後の話ではなかったでしょうか。それどころか、モーツァルトやヴェルディでさえ戦前の訳本ってのは残ってないんですよね。まあ、演劇とオペラでは、訳詞上演の難易度が全然違うし、音楽が付くこともあるし、ハードルの高さの違いで当時の演劇とオペラでは温度差があったということなのかもしれません。それとも浅草オペラを掘ってみると、なんか出てくるのかな~。

アリアーヌと青ひげ
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